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ベアリングレース等の焼き入れ層

Harley-Davidsonのコンロッドビッグエンドやケースベアリング、またトランスミッション等にはニードルベアリングが使用されています。このクリアランスはマニュアル上で指定してあります。で、当然ながら走行すると磨耗によりクリアランスが大きくなってしまうのですが、正規のクリアランスに復元するにはおおまかに2つの方法があります。

まずはベアリングレース(パイプ状のバーツ)やシャフトを交換せずに、コンパウンドでラッピング(砥石で削るようなもの)してオーバーサイズの新品ベアリングに交換することです。もうひとつはベアリングレースとクランクピンやシャフトを新品に交換することです。まあ新品に交換した場合も結局ラッピングは必要ですがね。しかしどちらの場合も現在の市販品を使用していては当時の純正パーツで組まれた品質をこえれないのではないかと思います。

ベアリング系の品質的な条件は、焼き入れ層がきちんと管理されているかどうかです。層というくらいなので、パーツ全体が焼き入りで硬いわけではありません。侵炭法や高周波焼入れ等により、回転接触する部分の表面の深さ0.05〜0.1ミリのみに硬さを持たせていなくてはいけません。この場合の硬さとは磨耗に強いという意味での硬さです。一方その他の部分は繰り返しの応力に対する強さを持たせなくては、使用するうちに割れてしまうことになります。大まかに言えば、硬い(ヤスリで削れない)と割れやすく、柔い(ヤスリで削れる)と粘りがあり割れないってことです。

この硬い表面も完全な剛体ではないので、軸回転を繰り返すとベアリングが次々に繰り返し押さえ付けていく為、微々たるものですが表面変型を繰り返しています。品質により回数は異なりますが、許容変型回数は限られています。限界を超えてしまうと、焼入れ層に微細なヒビが発生してきて硬化層が剥離し、ベアリングに致命的なダメージを与えてしまいます。最悪の場合、その破片がオイルと共に循環し、オイルポンプ破損等の二次トラブルを引き起こす結果を招くことでしょう。

そう考えるとベアリングレースやシャフトを交換しないでラッピングで済ませてしまうのはちょっと不安が残るのではないでしょうか。ひょっとすると許容変型回数まで近付いているかもしれません。しかもラッピングにより硬化層を少なくしてしまうわけですからね。

現時点で僕が総合的に良いと思うのは、予算が許せばベアリングレースやニードルローラー、シャフトをJIMSのに交換しラッピングできっちりサイズ合わせをして組むことです。JIMSのパーツに限っていえば意外と丁寧に製作されているようですので、まあ良い感じに仕上げることができるでしょう。個人的にはお勧めです。

2007.11.16